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大人にとっては小さな一歩でも・・・

少し前の話になりますが。

今年のお正月休みに長男(中2)が突然、「今月、学校で英検5級を受けるんだけど」と言うので、私は 「頑張って!」と、激励の言葉を心を込めて長男に送りました。
「 ・ ・ ・ 」。
まだ何か言いたそうな長男でしたが、私は わざと「気付かぬふり」をしていると、しばらくして「少し教えて欲しいんだけど・・・」と。私は「何を?」と意地悪く聞き返すと、「英語を教えて欲しい」と、
ようやく本題を切り出してきました。
「遠まわしな男だ!」と思いながらも、中学1年の教科書を引っ張り出し、教える事にしました。

そして、つい先日のこと、長男が鼻の穴を膨らませながら得意げに、合格通知を見せてくれました。私の教え方が良かったのか、問題が簡単だったのかは別として、まずは「良かったな!頑張ったな!」と褒めてやり、いま長男は「次は4級!」と、新たな目標に向かって頑張っています。

英検5級と言えば、中学1年生程度のレベル。「2年生ならば、合格するのは当たり前」と言ってしまえば、それまでなのですが、「鉄は熱いうちに打て」と言いますから、余計な事を言って熱い鉄が冷めないように、今はそっと見守ってやりたいと思っています。

さて、中学生ともなれば、学力の個人差はかなり開いてきます。我が息子2人は揃って「低空飛行」です。それもそのはず、私と妻は「勉強しなさい!」と 口うるさく言いませんから、毎日のびのびと遊んでいます。それでも小心者の長男は、下がっていく自分の成績に不安を感じるのか、最近は自分なりに試行錯誤を繰り返し、勉強しているようです。
その成績の良し悪しには、色々な原因があると思いますが、その中でも大切なのは 「やる気」だと思います。学習塾のテレビCMの言葉を借りれば、「やる気スイッチ」が入るか否かで、テレビCMのように見えるところにスイッチがあれば、ポチッと押してやるんですけど・・・。
低空飛行の我が子も、放課後の部活動や遊びは「やる気満々」で、無気力ではありませんし、長男に輪をかけて低空飛行の次男においても、魚や動物など好きな事に関しては、ものすごい集中力で着々と知識を増やしています。
「そのやる気と集中力を学校の勉強にまわせば・・・」と大人は思うのですが、なかなか思い通りにはなりませんし、大人だって好きな事を優先したくなるのは日常茶飯事です。
大切なのは、やる気(目的意識)ですから、それが出るまでは、そのヒントを目の前に転がす程度しか出来ませんし、間違っても「将来 楽するために(幸せになるために)、一生懸命勉強して良い大学に行きなさい!」なんて、口が裂けても言えません。そんな保証は、どこにもありませんから。
親は自分の経験から、「~しなさい!」と子供達に強制したくなりますが、親が経験してきた事なんて、所詮1人分の経験に過ぎません。我が子は自分に似たところが多々あるにしても、同じではなく、今までの経験もこれからする経験も「まったく同じ」という事はありえません。ですから、子供達が迷って助けを求めてきた時に私は、答えを出すのではなく、一緒に考えるようにしています。
大切なのは、「自分で考え判断し、行動できる力」を持つ事で、その「力」の中には学力も含まれますが、それだけでは足りません。まずは自分の目標を掲げ挑戦し、そして達成したときの喜びを知る事から始まります。また、途中の失敗や挫折は付き物ですが、早い時期からそれらを経験する事が後々の「力」になり、「失敗しないように」と親が先にレールを敷いてやる事は、その貴重な経験を逃す事になるのかも知れません。

少し話は変わりますが、私は小学生の頃、母にひどく叱られた事がありました。「父母会で、大恥かいた!」と。
私には、幼稚園の頃から仲が良い友人が近所にいて、親同士も仲良し、クラスも同じでしたから父母会の席も隣同士。その父母会では、1学期から3学期までのテストの結果を一覧にした表が、それぞれの親に配られ、それを見た私と友人の母親が「そんなに悪くないじゃない」と、予想外の結果に喜んだそうです。私も友人も毎日遊んでばかりで、勉強なんてしていませんでしたから、「結果は悪くて当たり前」と覚悟してようです。ただ その後、担任の先生から申し訳なさそうに一言、「全部100点満点なんです」と言われたそうです。そう、私も友人も全てが50点以下、母親たちは50点満点だと勘違いしていたようで、その後は正に、「穴があったら、入りたい心境」だったはずです。この時初めて「ちゃんと勉強しなさい!」と言われましたが、そう言われたのは、後にも先にもこの1回きりだったように記憶しています。

あれから40年が過ぎ、今 同じテストをやれば、それなりの点数はとれるはずです。要するに、そのときタイムリーに理解できなくても、後で理解できれば、結果は同じです。違うとすれば途中経過の点数で、その点数が良ければ必ず幸せになれるのであれば、良いのですが、そうとは限らないのが現実です。
しかし、「子供達には、幸せな人生を歩んでもらいたい」と思うのは共通の親心。「人生いろいろ」と考えれば、学歴(点数)もそうですが、これから起こるかもしれない困難に、立ち向かえる力をやはり身に付けさせてやりたいですね。

私は、子育て暦15年。妻と役割分担しながらあっという間の15年で、生まれて間もない手間のかかる時期が、今では懐かしく思います。
男の子の考える事や行動は、不思議と手に取るように分かる私ですが、妻には理解不能のようで、いつも笑ったり、叱ったりしています。私も親の立場として、妻の側に立ってはいるものの、昔 同じような事で叱られていた私にとってみれば、微妙な感じです。

今回 長男は、自分で英検5級の挑戦を決め、ギリギリになって不安になり「教えて欲しい」と助けを求めてきました。そして自分の目標を英検5級合格という形で達成しました。大人から見れば、小さな壁を越えたに過ぎないかも知れませんが、本人は、「大きな手ごたえ」があったようです。そして、次に4級という新たな目標を掲げ、学校の勉強にも今更ながらではありますが、力が入ってきたようです。
1969年、人類史上初の月面着陸で、ニール・アームストロング船長が言った一言、
「That’s one small step for a man,one giant leap for mankind.」
(これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である)
こんな言葉を思い出しました。

今まで、じっくり助走をつけてきた長男、これから大きく飛躍できるのでしょうか。

私は、親が考える「未来予想図」を子供達には見せません。それは、子ども自身で未来予想図を描いてもらいたいからです。
自分で描いたものであれば、失敗しても、挫折しても、また自分で描き直し挑戦できるからです。
とは言うものの、「低空飛行」の我が子を見ていると、のびのびしていて良い反面、不安にもなり、口を出したくなるのも正直な親心です。そして、「子育ては忍耐力」と自分に言い聞かせる今日この頃です。

 

 

 


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