下地から造作へ。
週の初め月曜日は、雨のスタートです。
大工さんは、先週までに耐火ボードをほぼ張り終え、今週は収納棚を取り付けたり、枠・建具を取り付けたりと、造作作業を始めます。
【階段の取付】
階段は、平面的に移動する事が多い家の中で、唯一上下(縦方向)に移動する所です。
人の感覚は敏感で、段差に対してもそれは同じです。特に、連続して同じ段差が続く階段での数ミリのズレは、「つまずく」という結果を招くので、階段の取付には細心の注意を払います。
作業は、中途半端にならないよう朝一番から初め、その日のうちに仮留めまで終わらせます。
最近では、親板(段板を取り付けるための側板)を先に工場で加工(プレカット)した物を使うことも多いようですが、基本的に木の森では、大工さんが現場で加工しています。
プレカットも現場加工も、現場で採寸して加工するので寸法的に違いはないのですが、工場で加工したものをただ取り付けるよりも、自分で採寸し、加工して取り付けるほうが、係わる工程が多い分、微調整しやすく精度を上げることが出来るのです。ただし、これは微調整する技術(腕)があっての話ですが。
既製品が多く手間の掛からない最近の建物では、その技術を必要とする場面が少なく、特に若い職人さん達は技術を学ぶチャンスが少ないという事でもあり、個人的には、昔のような手間のかかる家造りをしていきたいと思っています。
【枠・建具の取り付け】
「既製品」の話の続きになりますが、今回 取り付けている入口枠や建具も既製品です。
で、「既製品だから取り付けが簡単で技術がいらないか」といったら違うんです。
なんだか辻褄が合わない話に聞こえるかも知れませんが、そうなんです。
確かに、枠を組み立てたり建具を吊り込むのは色々と工夫されていて簡単なのですが、別の言い方をすれば、「建具の寸法が先に決まっているので、それに建物を合わせなければいけない」という難しさがあります。
一昔前、建具屋さんが製作から取付までやっていた時代は、大工さんが取り付けた枠に建具を合わせて造っていました。ですから、極端な話、枠が曲がって付いていても、建具をそれなりに造って調整してくれました。限度はあるにしても、そんな時代でした。
ただ、そんな時代でも腕のいい大工さんたちは、建具屋さんの調整が必要ない、精度の高い仕事をしていました。
写真の「ねじり鉢巻の大工さん」は、そんな時代からのお付き合いで、建具屋さんからも評判の大工さんでした。
さて、「建具に建物を合わせる」という話ですが、これは今の段階の話ではなく、基礎工事の段階からの積み重ねの話です。
今まで何度か書いてきましたが、地味な下地作業をキッチリやる事が、今の仕上りにつながります。
既製品の建具を簡単そうに取り付ける大工さんは、それまでの作業をキッチリ積み重ねてきた大工さん。苦労して取り付けている大工さんはその逆です。
楽しそうに枠や建具を取り付ける大工さんの姿を見ていて、私もたまに勘違いしそうになることがあるのですが、これは日頃の努力の積み重ねの結果なんですよね。
来週で、大工さんの作業も完了する予定です。
最後の一週間も、今まで通り一つ一つ丁寧に作業を進めます。
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