《 家の使い勝手を考える 6回目 》
限りあるスペースで、まず優先されるのは居間や台所などで、「玄関や階段室、廊下などは必要最小限に」と考えられ、逆に「広い玄関や階段室は贅沢」と考える方も多いのでは、ないでしょうか。
今回は、その後回しにされがちな、玄関と階段について考えてみます。
まず、住宅内部を機能別に分けると、リラックススペース、作業スペース、収納スペース、移動スペースに分ける事ができます。
リラックススペースは主に、居室として使われる部屋で、その代表が居間ですが、他にも音楽を聴くためのオーディオルームなどの趣味室があります。特に居間には、広さ(空間)を求める方が多く、一見無駄に感じる広さにも、気持ちをリラックスさせる効果があるようです。
作業スペースは、台所のように常に「使う」が目的のスペースで、当然の事ながら、ここでは使い勝手が重視され、浴室や脱衣室、トイレもこのスペースに当ります。ここでの無駄な広さは、作業効率を悪くする事もあるので、あくまでも作業動線が優先で、あえて狭くすることで、作業効率が上がることも多々あります。
貧乏学生の四畳半一間の下宿で、「寝ながらでも、手を伸ばせば何にでも手が届く」そんな感覚でしょうか。
収納スペースは、多いに越したことはないのですが、限りあるスペースの中では、どこかを減らさなければ収納は増やせず、悩みどころの1つです。
テレビ番組の「お宅拝見!」で見るような、玄関も居間も台所も広く、さらに収納もタップリの家は、もともと建物自体が大きいので、あまり参考にはなりません。
最後に移動スペースですが、これが今回お話しする、玄関や階段室、廊下の事です。
この移動スペースには、作業スペースと同じ「動き」という要素がありますが、このスペースは、屋外と屋内や部屋と部屋を結ぶ連絡通路で、一瞬で通り過ぎてしまうことが多く、あまり重要視されない事がほとんどです。
しかし考えてみれば、一瞬でありながらも、1日に何度も行き来するこのスペースは、家族の動線が交差することもあり、生活の中でも大切な役割を果たしています。
例えば、靴を履いたり脱いだりする玄関が狭いと、家族で出かけるときや、帰ってきたときに渋滞してしまいますし、大きな荷物を持っていれば、なおさらです。
このような時は、玄関の幅を広げるだけでも使いやすい玄関になります。
次に階段は、上下階を結ぶ通路で、平屋以外の建物には必ず必要なスペースです。そして、上下階の床の高さの差を「階高(かいだか)」と言いますが、この階高は構造が決まれば変わる事はなく、後は階段の段数によって「使いやすさ」が変わります。単純に、段数を多くすれば、段差が少ない緩やかな階段になり、段数を減らせば、その逆です。また、必要なスペースで考えれば、段数を増やせばその分のスペースが必要にまります。
階段は、平面的に移動する廊下と違い、段差が使いやすさのポイントになりますから、平面図だけを見て、「無駄だから」とスペースを削る事は、その段差が大きくなり、使いづらい階段になることもあるので、十分な検討が必要です。
生活動線の確保は、住み心地を向上させるものの、他のスペースを削る作業が必要です。そのためには、「必要な広さ」を各部屋・スペースごとにしっかりと把握しておく事が大切で、建築計画の際は、この移動スペースも含めて計画をすることをお勧めします。
1日に何度も、何気なく通り過ぎるのが、移動スペースです。
使用頻度が高いこのスペースに、少し余裕を持たせる事で「あずましい家」になったりもします。
また玄関は、「その家の顔」とも言います。少し余裕のあるスペースに、季節の花や小物など飾ってみてはいかがでしょうか。
次回は、北国には大切な「暖房について」です。