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新 モデルハウス情報 5

〈 続  必要なもの・無駄なもの 〉

前回、1階の予備室の事を書いていて、私の実家を思い出しました。

実家には、子供が入ることを許されない部屋がありました。それは、来客があった時に応対する「応接間」です。
「入ってはいけない!」と言われれば、なおさら入りたくなるのが子供ですが、大人もその辺は心得ていて、入ってはいけないその理由に、「中にライオンがいるから」と、今ならすぐバレるような嘘をついて、怖いイメージを私たち子供に、植え付けていました。
お陰で、小学校2年生くらいまでは、怖くてその部屋に近づくことすら出来ませんでした。
しかしある日、お客様がその部屋に入っても、何事も無く帰っていく姿に矛盾を感じ、「ライオンなんて嘘じゃないか?」と思うようになりました。
そして、大人達が誰もいないある日、勇気を出して覗いて見ることにしました。
最新の注意を払って、ドアを開けようとしましたが、少し建て付けが悪かったのか、どこかが擦って「ギィ~」と嫌な音を立てながら開きました。恐る恐るドアの隙間から見る初めての応接間は、薄暗く、独特の匂いがして、いかにもライオンがいそうな雰囲気で、その存在にまだ半信半疑だった私は、怖くなって一旦ドアを閉めました。
それから数日後、どうしても中を見たい私は、窓の外から中を覗いたり、ドアをノックしてライオンの反応をみたりと、色々やりましたが、何の気配も感じなかったので、勇気を出してもう一度、ドアを開けることにしました。
今度は、迷わず一気に開けました。
目の前に広がった光景は、今でもはっきり覚えていて、カーテンが半分くらい開き、そこから陽の光が差し込み、少し靄がかかっているように見えました。その空間は、生活感がまったく無く、今まで見た事もない不思議な世界で、「魔法使いのおばあさんの部屋みたいだ」と思ったことを覚えています。
派手なガラのソファーの横にはロッキングチェアーとランプの形をしたスタンド式の照明。そして、暖炉の上には、得体の知れない鳥の剥製と不思議な置物の数々。どれも初めて見る物ばかりで、8帖の部屋が何倍にも広く感じました。
この日以来、両親の留守を見計らって、物入の中など、細かいところまで捜索し、私の「お気に入りの部屋」になりました。

その部屋も、私が高校生になる頃には、父の趣味のオーディオルームになり、ずいぶん様変わりして、本来の応接間としての役割を失っていました。
今考えてみれば、「当時の時代の流れで、応接間を作ったものの、あまり使わなかった」という事でしょう。

私の実家は、20年くらい前に建て替えられ、当時の面影はなく、あの応接間もありません。
当時の面影と言えば、庭にある小学校の卒業記念にもらった「ケヤキ」の木くらいなもので、それも成長して「巨木」になり当時とは違います。
建て替えられた家は、居間や寝室の他に応接間ではない予備室があり、あまり使っている様子はありません。

むかしを懐かしく思い、今を見る。

なんとなく、予備室を用意したくなるのは、住み心地をよくする要素の一つ、「安心感」なのかも知れません。

 

 

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