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住宅はスクラップ&ビルドからロングライフへ

 第二次世界大戦で敗戦国となった日本は、そこから「追い付け、追い越せ」と技術、経済、その他全ての面で一所懸命努力し、高度経済成長を経て「豊かな日本」を創り上げました。

 私は、そんな「豊かな日本」が出来上がった後の良き時代に育ちましたから、周りには常に物があふれ、毎日食べられる事が当り前の生活でした。

 

 私が社会人になったのが平成3年春。 

 この時期「バフル崩壊」なんて言葉が、あちらこちらで聞かれ、数年後、周りの先輩方は、「あの頃は良かったなぁ~」と天を仰ぎながら、バブル時代を懐かしんでいました。

 それでも、物はあふれ、毎日ちゃんと生活は出来ていました。

 そして今でも、それはあまり変わりありませが、違いがあるとすれば、バブル期は「高級品」があふれ、今は「安い物」があふれているという事でしょうか。

 

 高度経済成長を「技術」という面から考えてみると、戦前から日本の「技術レベル」は相当高く、当時(戦時中)の技術力の象徴として、よく例に挙げられるのが「零戦」です。

 このような技術は、「戦争などの争い事によって急成長する」という悲しい現実もありますが、資源の少ない日本は戦後、輸入した資源を加工して、製品として海外へ輸出する事で日本経済を支え、さらに「Made in Japan」というブランドを築き上げました。

 日本の技術レベルの高さは、戦後に始まったことではなく、そのはるか昔からのことです。

 例えば、日本の伝統技術の一つとして良く挙げられる「日本刀」。

 この日本刀の歴史は、優に1,000年以上前にまで遡り、その技術は今も変わることなく受け継がれ、言い換えれば、1,000年以上前にその技術が確立していたという事でもあります。

 その他にも日本各地には、木造建築を含め、歴史ある伝統技術が沢山あり、一昔前まで、よく言われていた「技術大国日本」、これが日本の本来の姿なのでしょう。

 ある程度の経済成長を遂げた日本は、さらなる成長を遂げるために「消費(浪費)」の時代、いわゆる「使い捨て」の時代に入りました。

 使い捨ては、製品の質を落とし価格を安く抑え、「気軽に買って気軽に捨てる」そんな時代です。

 物の寿命が短くなれば、「買い替え」のサイクルは早くなり、経済は活性化されるのかもしれませんが、製品の製造コストを下げるために、人件費の安い海外へ生産工場を移すことは、日本の財産である「技術」までもが海外へ流出し、技術大国と言われた国の製品の中身が、殆ど他国で生産され、「Made in Japan」のシールを貼っただけの日本ブランドが、世界に出回る結果になります。

 それでも、日本の技術の「信頼性」が保たれれば良いのですが、最近の色々な製品のリコールの状況を見ていると、決して上手くいっているとは思えません。

 

 住宅業界でも数年前まで、「使い捨て(スクラップ&ビルド)」の考え方が主流でしたが、最近では、世界的に環境問題が議論されるようになり、このスクラップ&ビルドの考え方は、「環境破壊その物だ」とも言われています。

 バブル期からバブル崩壊後の最近まで、住宅の「寿命」は30年前後と言われていました。

 そして、その寿命が来たら、建て替えるか、壊して更地にするかで、いずれにしても建物は残らない事がほとんどです。

スクラップ&ビルドの考えのもと、建てられた住宅は、古くなってリフォームをしようとしても、あまりにも手間と時間が掛かことかが多く、住宅は築年数が経てば経つほど価値が下がり、あっという間に土地だけの価値になってしまいます。

 ですから、中古住宅を購入する方の中には、土地を買ったら建物も付いてくる「おまけ」的な感覚の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 古い家の価値が下がることを「当り前」と考える方がほとんどだと思いますが、イギリスやアメリカなど、住宅の建て替えサイクルの長い国では、しっかりと手入れをした住宅は、古くなるほど(手入れをするほど)価値が上がります。

 日本では、新築完成時が建物の価値のピークですが、イギリスやアメリカでは、新築時があくまでもスタート地点、その後、手入れを続けピークを迎え、その後も、一気に価値が下がる事はありません。

 日本でも昔は、同じ考え方だったはずなのですが、いつの間にか、手間をかけない「使い捨て文化」になってしまいました。

 

 ところで、ここ数年、「長期優良住宅」なんて言葉をよく耳にしますが、「優良住宅は長持ちするので、融資がいっぱい受けられる」と思っている方が多いのではないでしょうか。

 これは少しニュアンスが違っていて、先程のスクラップ&ビルドからの脱却の一環として、一つの良質な住宅をメンテナンスしながら長持ちさせ「孫子の代まで」という考えです。

 そして融資の増額分は、「今後のメンテナンス費の一部を先に融資する」という意味合いです。

 では単純に、「家を建てて、メンテナンスをすればいいのか」というと、そうではなく、「良質な家をメンテナンスをしながら長持ちさせる」ということで、良質な家とは、耐震性や耐久性、メンテナンス性、さらには省エネルギーや住環境の事まで考え計画された家のことです。

 つまり、これらの事を考えて造られた家は、長期に渡って住み続けたくなる「いい家」でもあります。

 これとは別に、中古住宅を購入し、メンテナンスをして家の寿命を延ばす方法がありますが、これは非常に「微妙」で、「その家次第」という事があります。

 「その家次第」と聞くと、少々無責任な言い方に聞こえるかもしれませんが、基本構造がしっかりしていないと「メンテナンス」というレベルの話ではなくなってしまうからです。

 度々聞く話が、「リフォーム済みの中古住宅を購入したが、数年後、見えない所が原因で、色々な問題を引き起こし、余分なメンテナンス費が掛った」と。

 これは、悪い部分を根本から直さず、表面的な部分だけ新しい建材で蓋をした結果、時間差で問題が発生してきたという事です。

 不動産屋さんにしてみれば、「出来るだけコストをかけず、見栄えを良くして、早く、高く売りたい!」そんな考えから、こんな事をするのでしょう。

 また現実問題として、バブル期の住宅は「どう手を掛けても直しようがない」という住宅も多くあり、そんな時はやはり更地にして土地として売るか、リフォーム前の状態をお客様に見ていただいて、しっかり説明をして判断していただくのが本来の姿でしょう。

 いずれにしても「悪い部分を隠して、良く見せる」、これは、建物を長持ちさせる事とはまったく違い、商売としても論外です。

 それでは、メンテナンスをしながら長持ちするいい家を造るためには?

 それはまず、建築屋さん選びからでしょう。

 大小合わせれば、星の数ほどある建築屋さんの中から、いい建築屋さんを選ぶ事は、至難の業ではありますが、あせらず、じっくり取り組む事が失敗しないための最低必要条件です。

 一言で「いい家」と言っても、「これだ!」という決定的な物はなく、ケースバイケース、十人十色です。

 お客様のご予算や価値観、その他色々な事がありますから、まずはじっくりお話を伺ってからでないと話は始りません。

 坪単価やキャンペーン期間などの問題ではありません。

 ロングライフ住宅、これはメンテナンスをしながら無理矢理長持ちさせる家の事では無く、メンテナンスをして長持ちさせたくなる「お気に入りの家」を意味します。

 長きに渡って愛着を持てる家、さらい言えば、時間の経過と共に愛着が増す家、これがロングライフ住宅です。

 

 「追い付け、追い越せ」で、ここまで来た日本。

 その陰には、環境問題等の色々な問題も残してきました。

 これからは、それらの問題を解決しながら「心豊かな日本」を造り上げる時代です。

 最近、よく耳にする「スローライフ」、 私は、この言葉がとても好きす。

 今後、色々な意味でスローライフの実現が出来るような社会になれば、と思います。

 

 

 


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