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ずっと住みたくなる家 1

以前のブログにも書きましたが、最近の住宅事情は、「長く住める家」が1つのテーマで、そのためには、耐久性、メンテナンス性、経済性の良い家造りが不可欠です。

建築屋さんの宣伝広告を見ても、そのような事が多く書かれていますが、お客様にしてみれば、「丈夫で、エコな建物ですよ」と言われても、ピンときませんし、訳の分からない数値を並べて見せられても、それが、どれほどの効果があるのか、分からないと思います。

長く住める家は、いつまでも住みたくなる家であり、そのためには性能はもちろんのこと、「住み心地の良い家」であることが大切です。その「住み心地」は、住む方によって感じ方が違い、単純に耐久性や断熱性能などの数値だけで、評価できるものでは、ありません。
例えば、断熱性能ひとつとってみても、数値上は同じ性能でも、建物の形状によって効率(効果)が違いますし、室内の温度が同じでも、吹抜けの有無や、階段の位置、窓の位置によっても、室内の空気の流れが変わり、体感温度も変わることがあります。
住み心地の良さは、これらの事も加味して、ストレスの無い空間を造ることでもあります。

居酒屋さんや、レストラン、喫茶店、デパート、コンビニ、学校、図書館、映画館、ショールーム等々、色々ありますが、それぞれの目的にそぐわない空間であれば、「雰囲気が悪い(居心地が悪い)」ということで、人は集まりません。
ストレスの無い空間とは、使う目的にあった空間であり、住む家(住宅)には、どのような目的があるのでしょうか。
これも、住む方によって違いがあるものの、1つ言えるのが、家は、生活の3大要素である「衣・食・住」の1つであり、その中でも家を建てるということは、何度もチャンスがある訳ではないので、数十年先の変化する「住(ライフスタイル)」まで見越して、色々と考える必要があります。

学校や仕事に行ったり、外食したり、映画を見に行ったり、買い物に行ったり、目的によって行く場所は変わりますが、最後は必ず家に帰ります。
たまに、家族で温泉やキャンプに行って帰ってくると、「やっぱり、家が一番だねぇ」という言葉が、ついつい出てしまいます。決して、温泉やキャンプがつまらない訳ではないのですが、帰ってくると、なんだか落ち着きます。
これは、アパートや借家に住んでいても同じで、住み慣れた空間は、ある一定の心地よさがあるものです。
そして、いろいろな空間がある中で唯一、家は行くところではなく、帰るところです。

話しは変わりますが、たまに行く喫茶店は、私にとっては、手軽に現実逃避できるお気に入りの空間です。
マスターには申し訳ないのですが、私は、コーヒーの味の違いがよく分からないので、喫茶店は、あくまでも、お店の雰囲気で選びます。
そして、その時の気分によって、雰囲気の違うお店に行くので、「喫茶店は、こうあるべき!」というこだわりも、ありません。
「形にこだわらないのが、こだわり」といえば、聞こえがいいかも知れませんが、それでも行くお店が、何件かに決まっているということは、自分では気付かないうちに、「なんとなく」こだわっているのかも知れません。

心地良い空間の正体は、この「なんとなく」なのかも知れません。

以前、ある喫茶店のマスターに、冗談半分で「いい雰囲気の職場で、いいですねぇ」と言ったことがあり、それに対しマスターは、「あくまでも職場だからねぇ ( ´Д`)=3」と一言。
期待に反した答えに、それ以上この話で、会話が弾むことはありませんでしたが、確かに、お客さんとしてある一時を、そこで過ごすのと、職場として毎日、緊張感を持って、そこに居るのとでは、正反対とまでは言わないまでも、違いがありそうです。

長く住む家に求める居心地と、一時を過ごす息抜きの場所に求める居心地には違いがあり、たまに行って「良い」と感じる場所も、毎日となると見慣れて、飽きてしまうことがほとんどです。

またまた話は変わりますが、私は、自然の写真を撮るのが好きで、趣味の延長線上で、学生時代にテレビ番組のVTRを作る会社でアルバイトをしたことがあり、そのときのカメラマンの方が言っていた言葉が、今でも心に残っています。

「趣味は、仕事にしないほうがいい!」

当時、学生だった私は、この言葉の意味をあまり理解できませんでしたが、今考えてみると、非常に意味深い言葉だったと感じています。

20数年前、何も分からず入った建築業界ですが、元々、造ることが好きだった私は、建築の仕事は面白く、今では他の仕事は考えられないほど好きです。
また、これとは別に趣味もあります。
そして今、趣味と仕事を重ね合わせて考えたとき、「趣味は、仕事にしないほうがいい」という言葉が理解できます。
仕事も趣味も、こだわり始めると、奥がどんどん深くなり、面白いものですが、それぞれ、こだわる方向が異なります。
お客様が求める事を自分にしかできない形で実現する仕事。
自分がやりたいことを自分の好きなようにやる趣味。
仕事と趣味、どちらも共通する部分が多くありますが、同一線上ではありません。
ただし、趣味が高じて仕事になっている方もいるので、もし、そういう方と話す機会があれば、「趣味でやっていたときと、同じ感覚で、仕事が出来ているか」をぜひ聞いてみたいと思っています。

さて、先ほども書きましたが、「居心地の良い空間・好きな空間」にも、住んで心地良い空間と、行って心地良い空間があります。
はじめて家を計画するとき、夢は膨らみ、今まで雑誌で見たり、行ったことのある場所のお気に入りの空間を再現したくなりますが、それはどちらの心地良さなのでしょうか。

例えば、たまに行くレストランの木の床を靴で歩く感覚は新鮮で、少し憧れたりします。
しかし日本人の多くは、家の中では靴を脱いで生活するので、「自宅でも、ずっと靴を履いたまま・・・」と想像すると、結果は容易に想像できるのではないでしょうか。
これは、極端な例だったかも知れませんが、他にも冷静に考えてみると、同じようなことが細々あると思います。

住宅は、建てる前にこだわるのが見た目のデザイン。

そして建ててから気になるのが、使い勝手。

「気に入ったオシャレなデザインでも、使い勝手が悪ければ、邪魔になる」ということで、リフォームで、新築時にこだわったところを普通に直す工事が多いのも納得できます。だからと言って、「見た目はどうでも良い」という事ではなく、使い勝手とデザインのバランスを考えた「機能美」を追求してみては、いかがでしょうか。
そのためには、まずデザインから考えるのではなく、住宅のそれぞれのパーツの使い勝手を、しっかりと理解しておく必要があります。

これから、何回かに渡って、それぞれの使い勝手を考えてみたいと思います。

 

 

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