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ずっと住みたくなる家 4

《 家の使い勝手を考える 3回目 》

今回は、居間・台所・食堂です。

一昔前は、台所や食堂を居間と分離するプランも多くありましたが、最近は、これらの空間を1つにまとめたプランがほとんどなので、今回は、この3つを合わせて考えてみたいと思います。

まず居間ですが、「陽当りが良く、広い空間が欲しい!」という方が圧倒的に多いのでは、ないでしょうか。
そうなれば、当然「南面に居間を配置して、大きな窓(サッシ)を」となるのですが、前回にも書きましたが、サッシは、明るさだけではなく、断熱の事も考慮しながら大きさや、取付け位置を決めることが大切です。また、同じ大きさのサッシでも、取付け位置によって「陽の入り方」が違い、天井や壁際に取付けたサッシは斬新で、なんとなくオシャレに見えますが、同時に、天井や壁に沿って光が走り、「下地の凸凹が見え易くなる」というリスクがあります。
この下地の凸凹は、施工不良によるものは別にして、どんなに高いレベルで施工をしても、「真っ平ら」という事は無く、下地の耐火ボードを留め付けるビスや、継ぎ目のパテ処理跡は、見た目では分からないような段差ですが、光を当てると「影」となって見えてしまいます。現に、そのような影は、ペンダントライトなどの吊り下げ式の照明やダウンライトを点けた状態では見えず、シーリングライト(天井に直接取付ける器具)や間接照明で、天井や壁に、光が走るような照明を点けた時のみに、現れます。
ですから、壁や天井に光が走るような造りにするときは、そこに使う仕上材を厚手のクロスや珪藻土など、予め凸凹のある素材を選ぶことで気にならなくなり、さらには、その凹凸が陰影をつくり、「味」になります。

< 間接照明による珪藻土壁の陰影 >

よく、「理想と現実は違う!」と言いますが、工夫次第では「いいとこ取り」が、できる事もあるので、サッシの選定と同時に仕上材の事など、総合的に考えておく事をお勧めします。

< ただ広ければ良い訳ではない >

そして「広さ」に関しては、やはり「出来るだけ広く!」となりますが、それには限度がありますし、使い勝手を考えると、居間は普段、家族が集まるスペースで、話をしたり、テレビを見たりと、あまり動き回らない事が多く、どちらかと言うと、実用的な広さより、感覚的な広さ(開放感)が求められています。
その開放感には、人それぞれ感じ方の違いがあり、設計段階でも、お客様が求める「広さの感覚」を把握するには、少し時間が必要です。
また、冷暖房効率のことを考えると、広すぎないほうが良いでしょうし、家具の配置やその他、居間に置く物によっても、必要な広さが変わってきます。さらに、最近のテレビは大型化し、特に「超大型テレビで、映画を見たい」なんて方は、その距離感や音の広がりも重要で、ここでも「適度な広さ」が問われます。
テレビと言えば、少し前までは、居間の角に斜めに置くのが一般的でしたが、最近流行の大型テレビは、角に斜めにして置くには大き過ぎ、また薄型でもあるため、壁に取付けるケースも増えています。
テレビは、斜めに置く時代から、壁と平行に置く時代に変わりつつあります。そして、設置するのに、大きな壁面が必要になった大型テレビは、サッシがある外壁面ばかりではなく、比較的、壁面積を確保しやすい内壁面に配置される事も多くなってきました。この時、注意が必要なのが、サッシとの位置関係です。内壁面にテレビを置くということは、サッシと向い合せになるケースが多く、「昼間、画面に光が反射して見づらい」なんて事も、あり得ます。プラン上、どうしても窓の正面にテレビを置くしかない場合は、カーテン等で昼間の光を調整する事になるのですが、そのカーテンも、左右に引き分けるタイプだと、全部閉めなければ効果が得られませんが、ロールスクリーンやシェードのように上下するタイプであれば、必ずしも全部閉めなくても、余分な光をカットすることが出来るので、これらの事も考慮して、プランする事が必要です。

広さ(開放感)の話に戻りますが、初めに書きましたが、最近は、居間に食堂や台所が隣接し、1つの空間にするプランが多いので、その位置関係を上手く利用する事で、居間を実用的な広さに留めても、より広く感じられる空間を作る事が可能です。
これとは別に、縦方向の開放感を求める場合は、やはり「吹抜け」です。しかし、この吹抜けも、注意が必要なポイントがいくつかあります。
その1つ目は、前回説明した「コールドドラフト」の問題で、特に吹抜けに大きな窓をつける時には、注意が必要です。このコールドドラフトに対しては、対処法がいくつかありますが、「冷暖房の効き」という面でも、やはり不利になるので注意が必要です。2つ目は、「音と風」の問題です。プランによっては、2階のホールと吹抜けをつなげて、より開放的な空間を作るとこが可能ですが、このことにより、居間の音が吹抜けを通して、2階へ伝わりやすくなります。例えば、家族の中でも生活のリズムは、それぞれ違いがあり、家族が寝静まった後に、居間でテレビを見ていると、2階で「うるさい」と言われたり、ヒソヒソ声で話をしていても、音は上に上がるので結構響きます。そして、最近の高断熱・高気密の住宅は、熱を逃がさないと同時に、音も外に逃がさないので、なおさら響きます。また、2階ホールとつながった吹抜けは、冬場、暖房で暖められた空気を2階に押し上げ、同時に2階の空気を押し下げるため、大きな対流が起こりやすく、居間から上がる階段があれば、そこも通り道となり、なおさらです。これは1つ目に書いた「コールドドラフト」と同じ現象で、この対流は、風となって体に感じ、体感温度を下げるため、不快に感じます。
しかし、セントラルヒーティングのように各部屋に熱源があるような暖房方式で、それを上手く調整して上下階の温度差を無くせば、大きな対流は起こりませんし、居間の暖房器具1台で、建物全体を暖めたい時などは、暖まるまで多少の時間は掛かりますが、この吹抜けが有効になります。
3つ目は、「逆効果」の話です。
居間を広く見せたくて、吹抜けを造るとしたら、逆効果になる事があります。それは、広さに対して、高さがありすぎると、縦長の空間が強調されて、床面積が実際より狭く感じる事があるからです。広さを強調するのであれば、ある程度、天井を低くしたほうが、効果的です。「狭く・低く」となると、損したような気持ちになりますが、あえて、そうする事で、有効な視覚効果を得られる事があります。
居心地は、実際の寸法より、「なんとなく」という感覚が大半を占めているので、「どう見えるか、どう感じるか」を想像してみる事が大切です。

そして、居間続きの食堂と台所ですが、お互いの相乗効果で、広く見える一方、見栄えの問題から、見せたくない物を隠す工夫が必要になります。対面キッチンが主流になって、しばらく経ちますが、最近は、より開放的な空間を求め、吊戸棚を付けないケースが増えています。このことにより、台所まわりの収納量は減り、隠す場所も減るのですが、考え方によっては、今まで吊戸棚には、あまり使わない物を仕舞い込んでいる事が多く、吊戸棚がなくなったからと言って、すぐに困るという事では無いようです。
「あまり使わない物は、別の場所に仕舞っても大丈夫」という事でしょう。
そして、台所の広さですが、広過ぎると移動距離が増え、作業しづらい空間になりますが、2人以上で、作業する事を想定するのであれば、奥行きを少し広めにして、人が行き来しやすいようにしたり、2方向から出入りできる回遊型にするのも、1つの方法です。
冷蔵庫の位置も、家族みんなで、開け閉めする事を考えると、台所の奥よりも手前(通路側)に置いたほうが、台所での作業の妨げにならないのかも知れません。
また、最近の高気密・高断熱の建物は、「結露対策」も重要で、詳しい事は別の機会に書きますが、台所の24時間換気対応の換気扇は、この結露対策に、とても有効です。

生活の中心となる、居間・食堂・台所。
夢のある空間にしたい一方、それが長く住む上で、欠点にならないように、実用性と夢を上手く組み合わせた「飽きの来ない空間」にしたいものです。

 

次回は、「脱衣室・浴室について」です。

 

 

《  ずっと住みたくなる家 3          ずっと住みたくなる家 5  》


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