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ずっと住みたくなる家 3

《 家の使い勝手を考える 2回目 》

今回は、「窓について」です。

いきなり細かい話になりますが、窓(サッシ)は、各部屋に共通して付く部品なので、最初に軽く触れておきます。
サッシは、「建物の見た目を左右する部品の1つ」であると同時に、建物内部に光や風を入れたりと、住環境を左右する重要な部品でもあります。また、取り付け位置やサイズによって、その効果は大きく変わります。

少し前までは、「部屋を明るくしたい」という事で、とにかく大きな窓を選ぶ傾向がありましたが、最近の省エネ志向で、それも変わりつつあります。

冬の昼間、大きな窓の部屋は、暖かい太陽の光に照らされポカポカとして、いい気持ちですが、夜になると一変、その窓から熱がどんどん奪われてしまいます。サッシの断熱性能が上がっている昨今ではありますが、それでも壁の断熱に比べると、それに追いついていないのが現状です。
ですから、断熱効果だけのことを言えば、「サッシはできるだけ小さいほうが良い」という事になります。

下の写真は、20年近く前、アラスカ州のバローという町を、訪れたときの写真です。

 Photo:H.mori

  Photo:H.mori

ここは、アメリカ合衆国最北端の町で、住人の多くがイヌイットと呼ばれる先住民族の方々です。
イヌイットやエスキモーと聞くと、氷で作った「かまくら」や、アザラシの皮で作ったテントに住んでいるようなイメージがありましたが、実際は、比較的近代的な建物の中で、快適に過ごしていました。
12月から3月までの平均気温が-30℃の北極圏の町、バロー。
この町の建物は断熱重視で、窓は必要最小限であることが見て分かります。それと、この時期の北極圏では、太陽が昇らない「極夜」が続くため、陽の光を直接取り込む習慣も無いのかも知れません。

北海道の環境では、ここまでする必要はありませんが、夏の暑さを考えても、窓はある程度小さいほうが有利です。
一般的に窓のトラブルは、冬場に多く発生し、目に見える物の代表が「結露」、体に感じるものは「コールドドラフト」です。
結露に関しては、良く知られている事なので、別の機会に書くとして、今回は「コールドドラフト」について少し考えてみたいと思います。
あまり耳にする機会が少ない言葉ですが、このコールドドラフトとは、窓面で冷やされた空気が重くなり、下降気流となって、「風」として体に感じる現象で、「すき間風」と勘違いされることが、よくあります。
気密性の良いサッシなのに、近くに手を当てると、スースーと風を感じる。これが、コールドドラフト現象です。
目には見えない、空気の流れではありますが、「熱気球の原理」を思い出していただければ、分かりやすいと思います。
熱気球は、風船のような球皮と呼ばれる袋の中の空気を暖めることで、浮力を得て上昇します。逆に、下降するときは、中の暖かい空気を抜くなどして、温度を下げます。そして、その温度差が大きいほど、速度も増します。

高断熱・高気密の建物の中でも、この温度差による空気の流れは必ずあり、それを感じる場所によっては、「不快」と感じます。そして、この温度差が一番できやすいのが、サッシのガラス面で、大きなガラスを背にして座っていると、特に感じることが多く、その代表が吹抜けのサッシ下です。
このような自然現象を完全に防ぐことは出来ませんが、その原理さえ理解していれば、ある程度コントロールすることは可能です。
例えば、居間の吹抜けの窓を背にしてソファーを置かないとか、冷えて下りてくる空気を押し上げるために、窓下に暖房パネルを付けるのも有効です。
それと、空気は冷やされれば、冷やされるほど重くなり、降りてくるスピードが速くなりなるので、上下に長いサッシは、短いサッシに比べ、より冷やされ、早い風を感じることになります。

サッシとコールドドラフトは切っても切れない関係ですが、取付け位置や大きさ、そして暖房パネル等を上手く組み合わせることで、不快な風を感じない、空間を造ることが出来ます。

サッシ選び1つ取ってみても、見た目以外に、先に考えておいたほうが良いことが色々あります。

この後も、それぞれの場所毎に分けて考えてみたいと思います。

 

次回は、「居間・台所・食堂」です。

 

 

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